神代ニレと入札_静岡優良ツキ板展示大会

2026.3.11

先日、静岡で開催された第75回 静岡優良ツキ板展示大会へ足を運んできました。
全国のツキ板メーカーが集まり、選び抜かれたツキ板が並ぶこの展示大会は、年に数回開催される貴重な機会です。

ツキ板を扱う者にとって、この会場はまさに「材料と出会う場所」。
一枚一枚の木目を見ながら、これから生まれる作品の可能性を想像する時間でもあります。

材料を取り巻く環境の変化

実はここ一年ほどで、私たちの周囲の状況が大きく変わりました。

これまで近隣には、ツキ板を小口で分けてくださる卸売企業が3社ありました。
しかしそのうち2社が閉業

ツキ板を貼ることを専門とする私たちにとって、材料がなければ何も作ることができません。
これまでは周囲の卸企業の皆さまに支えられて材料を分けていただいていましたが、その前提が変わり始めています。

もちろん、業界全体の高齢化を考えれば、こうした流れは予測できたことでもあります。
それでも、思っていたよりもずっと突然、環境は変化しました。

そのため近年は、全国のツキ板メーカーが集まる入札会へ直接買い付けに行く機会を増やしています。
今後はさらに頻繁に足を運ぶことになりそうです。

必要な材と、思わぬ出会い

入札ではまず、オークやタモなど、仕事に欠かせない材を優先的に選びます。
材料がなければ仕事が成立しないからです。

しかし、会場には時折、
「これは面白い」
と思わず足を止めてしまう木が現れます。

今回、個人的に強く惹かれたのが
北海道産の神代ニレでした。

着色ではなく、天然の色
このような深く落ち着いた色合いは、神代材にしか現れません。

たまたま入札会場で出会ったこの木が、これからどんな作品になるのか。
今からとても楽しみです。

神代木という、時間の痕跡

神代木(じんだいぼく)とは、
数百年から数千年前に火山噴火や山崩れなどによって地中や川底に埋もれたまま残った木が、現代になって掘り出されたものです。

通常の倒木であれば微生物や虫によって分解されてしまいます。
しかし神代木は、火山灰や泥に覆われた酸素の少ない環境で保存されたため、形を保ったまま残ることがあります。

土中の鉄分やミネラルが染み込むことで、
灰色や黒褐色など、独特で深みのある色になります。

長い年月を生きた木が、さらに長い時間を地中で眠り、
そして偶然掘り出され、
こうして今、私たちの前に現れる。

そう考えると、この木との出会いはとても特別なものに感じます。

木と直接向き合うということ

今回の入札では複数社が競り合う中、
この神代ニレが私たちの手元に来ることになりました。

長い時間を経て現れたこの木を、
森工芸の手で作品へと生まれ変わらせることができることを、心から嬉しく思います。

入札の雰囲気や仕組みには、まだ慣れていない部分もあります。
それでも、これからもこうした会場へ足を運び、直接木材と向き合う時間を大切にしていきたいと改めて感じました。

ちなみに今回は入札しませんでしたが、
タモの玉杢も見事でした。

手元の材料がもう少し減っていれば、きっと手を挙げていたと思います。

材料との出会いから作品は生まれる

森工芸の仕事は、
木を加工することだけではありません。

どの木と出会うか
その瞬間から、ものづくりは始まっています。

今回出会った神代ニレが、
どんな作品になるのか。

完成したときには、またご紹介できればと思います。